都市計画法の出題対策|一級建築士 法規で落とせない条文と数値を整理

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はじめに

法規の勉強を進めていくと、あるところで手が止まりませんか。

建築基準法は過去問を回せば形になってきた。防火区画も、採光も、斜線も、引く場所がわかるようになった。ところが問題文に「都市計画法」と書かれた瞬間、法令集のどこを開けばいいのかわからなくなる。

これは能力の問題ではありません。多くの受験生が、関係法令を最後まで手つかずのまま試験日を迎えているからです。建築基準法だけで条文量が膨大なので、後回しにするのは合理的な判断でもあります。

ただ、都市計画法には他の分野にない特徴があります。問われる範囲が狭く、しかも毎年ほぼ同じ場所から出るという点です。建築基準法 頻出条文ランキング20でも触れたとおり、法規30問のうち2〜3割は施行令の細部や他法令から出ます。都市計画法はその中に含まれます。

この記事では、都市計画法のうち試験で実際に問われる部分だけを、e-Gov法令検索で条文を引いて照合しながら整理します。法律全体を理解しようとはしません。得点になる急所に絞ります。

都市計画法は法規のどこで出るのか

まず、位置づけを確認します。

一級建築士の学科Ⅲ(法規)は30問。その大半は建築基準法と施行令からの出題ですが、終盤に関係法令の問題が置かれるのが通例です。都市計画法、消防法、建設業法、バリアフリー法、耐震改修促進法などがここに入ります。

都市計画法が扱いやすいのは、建築基準法とつながっているからです。用途地域も、建蔽率・容積率の指定も、防火地域の指定も、もとをたどれば都市計画法8条の「地域地区」として定められたものです。つまり、すでに学んだ建築基準法の知識と地続きになっています。

一方で、都市計画法にしかない独自の論点もあります。それが開発許可建築制限です。ここが出題の中心になります。

全体像は3層で押さえる

都市計画法の条文は非常に多いのですが、試験に必要な構造は次の3層に整理できます。

内容 主な条文
① 区域を指定する 都市計画区域・準都市計画区域 法5条・5条の2
② 区域を区分する 市街化区域/市街化調整区域 法7条
③ 地域地区を定める 用途地域・防火地域・高度地区など 法8条

このうち②の区域区分が、開発許可の判断に直結します。条文を実際に見てみます。

(区域区分)
第七条 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。
 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

■ 赤の下線 = 条文の骨格(本文の要旨)
■ 蛍光ペン = 重要な用語・定義
■ 青の下線 = ただし書き・例外規定

ここで押さえるべき点は2つです。

1つめは「おおむね十年以内」という数字。 市街化区域の定義に含まれる唯一の数値で、選択肢で「二十年以内」などに書き換えられることがあります。

2つめは本文とただし書きの語尾の違い。 本文は「定めることができる」(任意)ですが、ただし書きは「定めるものとする」(義務)です。三大都市圏の一定の都市計画区域では区域区分が必須になる、という構造がここに書かれています。

なお、区域区分が定められていない都市計画区域を非線引き都市計画区域と呼びます。試験でも実務でもこの呼び方が使われますが、条文上は「区域区分が定められていない都市計画区域」と表記されます。法令集を引くときは条文の表記で探してください。

開発許可(法29条)が最大の山場

都市計画法の出題で、最も高い確率で問われるのが開発許可です。ここだけは数値を含めて正確に覚える必要があります。

まず「開発行為」の定義を固める

法4条12項の定義はこうです。

「開発行為」とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう

ポイントは「主として〜の用に供する目的で」という限定です。建築目的のない単なる造成は開発行為に当たりません。

「特定工作物」は法4条11項で2種類に分かれます。

区分 内容
第一種特定工作物 コンクリートプラントその他、周辺の地域の環境の悪化をもたらすおそれがある工作物で政令で定めるもの
第二種特定工作物 ゴルフコースその他大規模な工作物で政令で定めるもの

この一種・二種の入れ替えは、選択肢で使われやすいところです。環境悪化のおそれ=第一種、大規模=第二種と結びつけて覚えます。

許可が必要な規模を区域ごとに整理する

法29条1項の本文を見ます。

(開発行為の許可)
第二十九条 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(…指定都市等の区域内にあつては、当該指定都市等の長…)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの

■ 赤の下線 = 条文の骨格(本文の要旨)
■ 蛍光ペン = 重要な用語・定義
■ 青の下線 = ただし書き・例外規定

1号をよく読んでください。列挙されているのは「市街化区域」「区域区分が定められていない都市計画区域」「準都市計画区域」の3つだけで、市街化調整区域が入っていません。

ここが試験の急所です。規模による適用除外は市街化調整区域には働きません。つまり市街化調整区域では、規模の大小にかかわらず開発許可が必要になります。

具体的な規模は施行令19条と22条の2で定められています。

区域 許可が必要になる規模 根拠
市街化区域 1,000㎡以上 令19条1項
市街化区域(三大都市圏の既成市街地・近郊整備地帯等) 500㎡以上 令19条2項
区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域 3,000㎡以上 令19条1項
市街化調整区域 規模を問わず必要 法29条1項1号に列挙なし
都市計画区域・準都市計画区域外 1ha(10,000㎡)以上 法29条2項・令22条の2

さらに令19条1項ただし書きで、条例により300㎡以上の範囲まで引き下げることができると定められています。「条例で引き下げられる」という論点は選択肢になりやすいので、表とセットで覚えておいてください。

数値が5つ並ぶと覚えにくく見えますが、並び順に意味があります。市街化が進んでいる区域ほど小さい面積で規制がかかる、という一本の筋で理解すると定着します。500㎡ → 1,000㎡ → 3,000㎡ → 10,000㎡、そして市街化調整区域だけが別枠で「全部」。

許可が不要になる開発行為

法29条1項のただし書きには、規模以外の適用除外も並んでいます。試験でよく問われるのは2号です。

農業・林業・漁業の用に供する政令で定める建築物、またはこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物を建てる目的の開発行為は、許可が不要になります(法29条1項2号)。

「政令で定める建築物」の中身は令20条にあり、畜舎・温室・堆肥舎・サイロなどが列挙されています。同条5号には「建築面積が九十平方メートル以内の建築物」という受け皿規定があり、この90㎡という数値が問われることがあります。

3号以下では、駅舎その他の鉄道施設、図書館、公民館、変電所など、公益上必要な建築物が挙げられています(具体的な範囲は令21条)。ここは列挙が長いので、丸暗記ではなく法令集で引ける状態にしておくのが現実的です。

市街化調整区域の開発許可は基準が二重

市街化調整区域には、もうひとつ独自のルールがあります。

通常の開発許可は法33条の技術的基準を満たせば許可されます。しかし市街化調整区域では、法33条に加えて法34条各号のいずれかに該当しなければ、都道府県知事は開発許可をしてはならないとされています。

市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」(法7条3項)ですから、基準が上乗せされているわけです。「33条だけでは足りない」という構造さえ押さえておけば、選択肢の正誤は判断できます。

許可のあとに続く建築制限

開発許可は「許可を取って終わり」ではありません。その土地に建物を建てる段階でも制限がかかります。この時系列を混同させるのが、都市計画法の典型的な出題パターンです。

場面 制限の内容 条文
工事完了の公告 開発区域内で建築物を建築してはならない 法37条
工事完了の公告 予定建築物等以外を新築・改築・用途変更してはならない 法42条
開発許可を受けていない市街化調整区域 建築物の新築等に都道府県知事の許可が必要 法43条
用途地域が定められていない区域の開発許可 知事が建蔽率・高さ・壁面の位置等を定められる 法41条

順に見ていきます。

法37条(工事完了公告前)。 開発許可を受けた開発区域内では、工事完了の公告があるまで建築物を建築できません。ただし書きで、工事用の仮設建築物や、知事が支障がないと認めたときは除かれます。造成が終わっていない土地に建物を建てさせない、という趣旨です。

法42条(工事完了公告後)。 公告後は、その開発許可に係る予定建築物等以外を新築できません。改築や用途変更で予定建築物以外にすることも禁止されます。ただし、知事が支障がないと認めて許可したとき、またはその区域に用途地域等が定められているときは適用されません。用途地域があれば建築基準法の用途制限が働くので、重ねて規制する必要がない、という理屈です。

法43条(開発許可を受けていない土地)。 市街化調整区域のうち、開発許可を受けた開発区域以外の区域では、建築物の新築等に知事の許可が必要です。ここには開発行為を伴わない建築も含まれます。ただし書きで、都市計画事業の施行として行うもの、非常災害の応急措置、仮設建築物の新築などが除外されています。

法41条。 用途地域が定められていない土地で開発許可をする場合、知事は建蔽率・建築物の高さ・壁面の位置などの制限を定めることができます。用途地域がなければ建築基準法の形態規制がかからないため、開発許可の側で補う仕組みです。建蔽率・容積率の計算方法で扱った数値とは別系統の制限なので、混同しないよう注意してください。

都市計画施設の区域内の建築許可(法53条・54条)

もうひとつ、繰り返し問われるのが法53条です。

都市計画施設の区域(道路や公園など、都市計画に定められた施設の予定地)または市街地開発事業の施行区域で建築物を建築しようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

将来そこに道路や公園を造る予定があるため、簡単に取り壊せない建物を建てられると困る、というのが趣旨です。

そして法54条3号が、この趣旨をそのまま数値化しています。次の要件に該当し、かつ容易に移転・除却できると認められるものは、知事は許可をしなければならないと定められています。

  • 階数が2以下で、かつ地階を有しないこと
  • 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること

「階数2以下・地階なし・木造等」という組み合わせは、そのまま出題されます。鉄筋コンクリート造は含まれない点、「地階を有しない」という条件が付く点が、書き換えの狙われどころです。

また条文の語尾が「許可をしなければならない」(羈束的な処分)である点にも注意してください。「許可することができる」と書き換えられていれば誤りです。

地区計画に関する届出(法58条の2・建基法68条の2)

最後に、地区計画まわりを整理します。ここは都市計画法と建築基準法をまたぐので、混同が起きやすい論点です。

都市計画法58条の2 は届出の規定です。地区計画の区域(地区整備計画等が定められている区域に限る)内で、土地の区画形質の変更や建築物の建築などを行おうとする者は、行為に着手する日の30日前までに市町村長に届け出なければなりません

押さえるべき要素は3つ。「30日前まで」「市町村長」「届出(許可ではない)」です。ここを「許可」「都道府県知事」「30日以内」に書き換えるのが定番の誤り選択肢です。

建築基準法68条の2 は条例の規定です。市町村は、地区計画等の区域内において、地区計画等の内容として定められた建築物の敷地・構造・建築設備・用途に関する事項を、条例で制限として定めることができます

つまり、届出のルールは都市計画法、条例で制限をかける根拠は建築基準法という役割分担です。法律の割り当てを入れ替える出題は、建築士法と建築基準法の違いでも見たとおり、関係法令における定番の作り方です。

あわせて、田園住居地域内の農地についても都市計画法52条に規定があります。土地の形質の変更や建築物の建築を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません。用途地域の一つである田園住居地域は用途地域13種類の制限を完全整理で扱っていますが、農地の規制は都市計画法側にある、という点が独自の論点です。

誤り選択肢の作られ方

ここまでの内容を、出題者の視点で整理し直します。都市計画法の誤り選択肢は、ほぼ次の5パターンに収まります。

パターン1:区域の入れ替え
「市街化調整区域内で行う開発行為で、その規模が1,000㎡未満のものは許可を要しない」→ 誤り。規模による除外は市街化調整区域に適用されません(法29条1項1号)。

パターン2:数値の書き換え
1,000㎡ ⇄ 3,000㎡、500㎡ ⇄ 300㎡、1ha ⇄ 3ha、90㎡ ⇄ 100㎡、30日前 ⇄ 30日以内。数値はすべて書き換え候補と考えてください。

パターン3:許可と届出の混同
地区計画区域内の行為は「届出」(法58条の2)。都市計画施設の区域内の建築は「許可」(法53条)。田園住居地域内の農地は「許可」(法52条)。

パターン4:処分権者の入れ替え
開発許可は都道府県知事(指定都市等ではその長)。地区計画の届出先は市町村長。田園住居地域の農地の許可も市町村長。

パターン5:語尾のすり替え
「定めることができる」(任意)と「定めるものとする」(義務)、「許可をしなければならない」(羈束)と「許可をすることができる」(裁量)。条文の語尾は本文と同じ重みで読む必要があります。

社会人受験生のための取り組み方

働きながらの学習で、都市計画法にどれだけ時間を割くべきか。現実的な配分を示します。

まとまった時間は必要ありません。 この記事で扱った条文は10本ほどです。建築基準法の1テーマ分にも満たない量です。

おすすめは、法令集にタブを立てるところから始める方法です。法29条(開発行為の許可)、法43条(建築等の制限)、法53条(建築の許可)、法58条の2(建築等の届出等)の4か所。ここに指が入るようになるだけで、本番での探索時間が大きく変わります。

そのうえで、次の順で進めます。

  1. 数値の表を1枚に手書きする(15分)。この記事の規模の表を、自分の字で書き写します。書き写す作業そのものが記憶に効きます
  2. 過去問の関係法令だけを抜き出して解く(1回30分×3回)。分野横断ではなく、都市計画法だけを連続で解くと、出題パターンの反復に気づけます
  3. 間違えた選択肢を、条文のどの語に対応するかまで戻して確認する(都度)

通勤時間で進めるなら、1の表をスマートフォンで撮影して繰り返し見るだけでも効果があります。都市計画法は理解より照合の分野なので、細切れの時間と相性がいいのです。

法令集の引き方そのものに不安がある場合は、法令集の引き方と線引きのコツを先に読んでおくと、この記事の線引き例もそのまま自分の法令集に反映できます。

まとめ

  • 都市計画法は範囲が狭く、出る場所がほぼ固定されている。関係法令の中では取り組みやすい分野
  • 全体像は 区域の指定 → 区域区分(法7条)→ 地域地区(法8条) の3層で捉える
  • 最大の山場は開発許可(法29条)。市街化区域1,000㎡(三大都市圏の一定区域500㎡)、非線引き都市計画区域・準都市計画区域3,000㎡、区域外1ha
  • 市街化調整区域には規模による適用除外がない。法29条1項1号に列挙されていないことが根拠
  • 農林漁業用建築物は許可不要(法29条1項2号・令20条)。建築面積90㎡以内という受け皿規定がある
  • 建築制限は時系列で整理する。公告前=法37条、公告後=法42条、開発許可外の市街化調整区域=法43条
  • 都市計画施設の区域内は許可(法53条)。階数2以下・地階なし・木造等なら許可しなければならない(法54条3号)
  • 地区計画の区域内は着手30日前までに市町村長へ届出(法58条の2)。条例で制限をかける根拠は建築基準法68条の2
  • 誤り選択肢は「区域の入れ替え」「数値」「許可と届出」「処分権者」「語尾」の5パターンに集約される

建築基準法の学習が一段落したら、次に手をつける価値が高いのが都市計画法です。投じる時間に対して、拾える問題の密度が高い分野だからです。

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