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はじめに|防火関連用語、最初は誰でも混乱する
法規の勉強を始めた当初、「防火設備」と「特定防火設備」という言葉が出てきたとき、正直「これって何が違うの?」と頭が真っ白になりませんでしたか?
「防火」という言葉がついていれば大体同じでしょ、と思いたくなる気持ち、よくわかります。しかも建築基準法の条文には「防火設備」「特定防火設備」「防火戸」といった言葉が次々と登場して、読めば読むほど混乱してしまう。法規が苦手な受験生の多くが、この防火まわりの用語整理でつまずいています。
しかも社会人受験生の場合、まとまった勉強時間を確保するのが難しいなかで、このような「似たような用語の違い」を整理する作業は後回しになりがちです。「なんとなくわかった気がする」のまま試験に臨み、選択肢の細かい数字や言い回しの差で失点してしまう——そんなパターン、法規では特に多いんですよね。
この記事では、防火設備と特定防火設備の違いを基礎からしっかり整理します。定義・性能・使用場所の違いを表で比較したあと、防火区画との関係、試験で狙われやすい出題パターン、そして忙しい社会人でも継続できる学習法まで、一気に解説していきます。
「防火関連は苦手」という意識が、この記事を読み終えたあとに少し薄れていたら嬉しいです。一緒に整理していきましょう。
防火設備・特定防火設備とは|定義の整理
まず「防火設備」とは何か
建築基準法において、防火設備は法第2条第9号の2ロおよび令第109条に規定されています。
条文の表現を嚙み砕くと、防火設備とは「通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間、当該加熱面以外の面に火炎を出さないものであること」という遮炎性能を持つ建具・設備の総称です。
具体的には以下のようなものが防火設備に該当します。
- 防火戸(鉄製・鋼製・網入りガラス入り等)
- 防火シャッター
- 防火ダンパー
- ドレンチャー設備
なかでも防火戸は、防火設備の代表格です。防火戸とは、火災時に開口部を閉鎖して炎や煙の拡大を防ぐ「戸」のことで、常時閉鎖式(常に閉じている)と随時閉鎖式(煙感知器と連動して閉じる)の2種類があります。
「特定防火設備」とは何か
特定防火設備は令第112条第1項などに規定されています。こちらは防火設備よりも高い性能が求められており、「通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間、当該加熱面以外の面に火炎を出さないものであること」という遮炎性能を持つものとされています。
「防火設備」は特定防火設備を含む概念か?
ここが少し紛らわしいポイントです。広義の意味では、特定防火設備も「防火設備」の一種と捉えることができます。しかし試験の文脈では、「防火設備」と「特定防火設備」は別の性能レベルを指す用語として使い分けられています。
条文で「防火設備」と書かれている場合、そこに特定防火設備を使っても要件を満たしますが、「特定防火設備」と指定されている箇所に通常の防火設備(20分耐火)を使うことはできません。この上位・下位の関係を意識しておくことが重要です。
両者の違いを表で比較|遮炎性能・加熱時間・主な使用場所
| 比較項目 | 防火設備(旧:乙種防火戸) | 特定防火設備(旧:甲種防火戸) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 法第2条第9号の2ロ、令第109条 | 令第112条第1項等 |
| 遮炎性能(加熱時間) | 加熱開始後 20分間 | 加熱開始後 1時間(60分間) |
| 主な使用場所 | 防火地域・準防火地域の外壁開口部、延焼のおそれのある部分等 | 1時間準耐火構造以上の区画の開口部等 |
| 代表例 | 網入りガラス入り鋼製戸、防火シャッター(20分仕様)など | 常時閉鎖式の鋼製防火戸、随時閉鎖式の防火シャッター(1時間仕様)など |
| 要求される区画の例 | 高層区画(100㎡以内の区画)、竪穴区画 | 面積区画、高層区画(100㎡以上の区画)、異種用途区画の開口部 |
防火設備と特定防火設備の遮炎性能比較
防火設備
20分
遮炎性能
防火地域・準防火地域の外壁開口部、延焼のおそれのある部分等
特定防火設備
60分
遮炎性能(1時間)
1時間準耐火構造以上の
区画の開口部等
※特定防火設備は防火設備の上位互換。特定防火設備が要求される箇所に防火設備は使用不可。
この表を丸ごと覚えようとするより、「加熱時間が20分か1時間か」 という核心部分を先に固めることをおすすめします。
1時間準耐火構造の区画の開口部には、同じく1時間の遮炎性能を持った特定防火設備が求められるから1時間をセットで覚えましょう。
試験でもこの数字の差を問う問題が頻出です。
防火区画と防火設備の関係
防火区画の種類を先に整理する
防火設備の要求は、防火区画の種類によって異なります。まず防火区画の主な種類を確認しておきましょう。
| 区画の種類 | 概要 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 面積区画 | 一定面積ごとに区切る | 令第112条第1項〜第6項 |
| 高層区画 | 高層建築物の各層の区画 | 令第112条第7項〜第10項 |
| 竪穴区画 | 吹き抜け・階段・エレベーター等の竪穴部分 | 令第112条第11項〜第15項 |
| 異種用途区画 | 用途が異なる部分を区切る | 令第112条第18項 |
どの区画にどちらの設備が必要か
防火区画の開口部に求められる防火性能は、区画の種類と構造によって変わります。ポイントは以下のとおりです。
特定防火設備が要求される主な場面
- 耐火建築物の主要構造部に設ける防火区画の開口部(令第112条第1項の面積区画など)
- 高層区画(令第112条第8項〜第10項)100㎡以上の区画とした場合の開口部
- 異種用途区画(令第112条第18項)における開口部
防火設備(20分)でよい主な場面
- 高層区画(令第112条第8項〜第10項)100㎡以下の区画とした場合の開口部
- 竪穴区画の開口部のうち、令第112条第11項(準耐火構造による区画)に定めるもの
条文の細かい読み込みが必要な部分も多いので、区画の種類ごとに条文と照らし合わせながら整理することが重要です。
防火区画での具体的な使用例
実際の建築物で、どのような場面で防火設備・特定防火設備が使われるのか、具体例を見てみましょう。
【例1】10階建て事務所ビルの面積区画(令第112条第1項)
耐火建築物のため、各階1,500m²ごとに面積区画が必要。
区画壁の開口部 → 特定防火設備(常時閉鎖式または随時閉鎖式防火戸)
【例2】マンションの竪穴区画(令第112条第11項)
エレベーターシャフト・階段室を他の部分と区画。
区画壁の開口部 → 防火設備(常時閉鎖式または煙感知器連動の随時閉鎖式防火戸)+ 遮煙性能も必要
【例3】1・2階店舗+3階以上共同住宅の異種用途区画(令第112条第18項)
用途が異なる部分を区画。
区画壁の開口部 → 特定防火設備(常時閉鎖式または煙感知器連動の随時閉鎖式防火戸)+ 遮煙性能も必要
【例4】準防火地域内の木造2階建て住宅(法第62条)
延焼のおそれのある部分の外壁開口部(窓など)。
開口部 → 防火設備(網入りガラス入り鋼製サッシなど、20分の遮炎性能)
このように、防火区画の開口部には特定防火設備(1時間)or防火設備(20分)、延焼のおそれのある部分等には防火設備(20分)が使われるという原則を、具体的な建築物のイメージとセットで覚えると定着しやすくなります。
防火区画は「区画する壁・床の性能」と「開口部の性能」がセット
防火区画の問題を解くときに陥りやすいミスが、「区画する床・壁の性能」だけに注目して「開口部の設備」を見落とすことです。条文を読む際は、「この区画の開口部には何が必要か?」という視点を常に意識するようにしましょう。
また、開口部に防火設備や特定防火設備を設けるだけでなく、常時閉鎖式か随時閉鎖式か(煙感知器連動など)遮煙性能が必要かという作動方式の条件が別途定められていることも確認が必要です。
試験で狙われる「開口部の防火設備」の条件
頻出ポイント1:延焼のおそれのある部分の開口部
防火地域・準防火地域では、外壁の開口部(窓、出入口など)に防火性能が要求されます。
- 防火地域・準防火地域内の建築物:外壁の開口部に防火設備が必要
延焼のおそれのある部分とは、隣地境界線・道路中心線・同一敷地内の他の建築物から、1階は3m以内、2階以上は5m以内の部分です(法第2条第6号)。この数字は試験でよく問われます。
頻出ポイント2:竪穴区画の開口部
竪穴区画は、エレベーターシャフト・階段室・吹き抜けなどの「縦方向の穴」を他の部分と区切るための区画です。
令第112条第11項による竪穴区画では、開口部に防火設備が必要とされています。
頻出ポイント3:異種用途区画の開口部
令第112条第18項に定める異種用途区画は、用途が異なる部分(例:1・2階が店舗、3階以上が共同住宅)を防火区画するものです。この区画の開口部には特定防火設備が必要です。
異種用途区画は、区画が必要な組み合わせと不要な組み合わせの判断でも失点しやすいポイントですが、「区画が必要と判断されたら開口部は特定防火設備」という点は押さえておきましょう。
頻出ポイント4:防火設備の「遮煙性能」
令第112条の一部改正(2019年施行)以降、防火区画の開口部には遮炎性能に加えて遮煙性能も求められる場面が増えています。試験では「遮炎性能のみで足りるか」「遮煙性能付きの防火設備が必要か」を問う問題も出題されています。
遮煙性能が要求される主な場面:
- 竪穴区画(令第112条第11項・第12項)の開口部
- 異種用途区画の開口部
最新の試験対策では、この「遮煙性能の有無」もセットで確認するクセをつけることが大切です。
遮煙性能が必要なものにはマーカを引いておくとわかりやすいです。
よく間違える問題パターン
パターン1:加熱時間の数字を逆に覚えてしまう
「防火設備=1時間、特定防火設備=20分」と逆に覚えてしまうミスが意外と多いです。「特定=より厳しい=1時間」という方向性を先に固めておきましょう。
誤りやすい選択肢の例:
「特定防火設備は、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間、加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有するものである。」
→ ×(正しくは1時間)
パターン2:「防火設備で足りる」か「特定防火設備が必要」かの判断ミス
条文をきちんと読んでいないと、「この開口部には防火設備でよいか、特定防火設備が必要か」という判断を誤ります。「耐火構造の区画」か「準耐火構造の区画」かを先に確認する習慣が有効です。
誤りやすい選択肢の例:
「耐火建築物における面積区画(令第112条第1項)の開口部には、防火設備(加熱開始後20分の遮炎性能)を設ければよい。」
→ ×(特定防火設備が必要)
パターン4:延焼のおそれのある部分の距離を誤る
「1階は3m、2階以上は5m」という数字を「1階は5m、2階以上は3m」と逆に覚えてしまうパターンも定番のミスです。火は上に向かうほど広がるため2階の方が数字が大きいのです。数字を確認したら反復して定着させましょう。
パターン5:防火ダンパーを「防火設備」として正確に把握していない
換気・空調設備のダクトが防火区画を貫通する際に設けるダンパーも、防火設備の一種です。「防火設備といえば戸(扉)だけ」と思い込んでいると、ダンパーに関する問題で判断を誤ることがあります。
社会人向け効率的な学習法
法規は「積み上げ型」ではなく「引き方型」で攻める
国語や算数のような積み上げ型の科目と違い、建築基準法の法規は「条文の引き方を覚える」科目です。すべての条文を丸暗記することは不可能ですし、その必要もありません。試験本番では法令集の持ち込みが認められているため、「どこに何が書いてあるか」を素早く引ける力が問われます。
インデックスと線引きに時間を投資する
法令集は購入後すぐに受験勉強に使えるわけではなく、インデックスを貼り、アンダーラインを引く作業が必要です。これが面倒に感じるかもしれませんが、この作業自体が「条文の場所を覚える」うえで非常に効果的です。
社会人の場合、この線引き作業を細切れ時間(通勤電車や昼休みなど)に少しずつ進めるとよいでしょう。
過去問は「なぜ×か」まで言語化する
法規の問題演習では、○×の判定だけで終わらせずに「この選択肢はなぜ×なのか、正しい記述はどうなるか」を言葉にする習慣をつけましょう。特に本記事で紹介した「よく間違えるパターン」に該当する問題が出てきたときは、正しい数字・用語を声に出して確認することが定着につながります。
平日15分、休日90分のリズムを作る
社会人受験生に多いのが「休日にまとめて勉強しよう」という計画が崩れるパターンです。法規は反復が重要なので、平日でも15〜20分だけ過去問を1〜2問解く、法令集を1条文だけ読むという小さなルーティンを維持することが、長期的な実力向上につながります。
苦手な条文は「音声化」で隙間時間に刷り込む
通勤中や家事の合間など、テキストを広げられない時間には音声学習が効果的です。スタディングなどのオンライン講座では動画・音声コンテンツが充実しており、耳からの学習で繰り返し聞くことで、主要な条文の数字や要件が自然と頭に入ってきます。
まとめ
この記事では、一級建築士試験の法規でよく混乱する「防火設備」と「特定防火設備」の違いを整理しました。最後にポイントをまとめておきます。
核心の整理:
- 防火設備:加熱開始後 20分間 遮炎性能を持つ
- 特定防火設備:加熱開始後 1時間(60分間) 遮炎性能を持つ
- 「特定=より厳しい性能=1時間」という方向性を先に固める
- 1時間準耐火構造の防火区画の開口部 → 原則として特定防火設備
- 延焼のおそれのある部分の距離は「1階3m・2階以上5m」
- 防火区画の問題では「区画の性能」と「開口部に必要な設備」をセットで確認する
- 遮煙性能が別途求められる場面(竪穴区画など)も見落とさない
防火関連の条文は量が多く、最初は誰でも混乱します。しかし、本記事のような形で「比較して整理する」という作業を一度しっかり行うと、条文を読んだときの引っかかりが大幅に減ります。
今日覚えたことを活かして、ぜひ法令集で該当条文(令第109条・令第112条)を実際に引いてみてください。目で確認することで、より確実に定着します。
あなたの法規の勉強が、一歩前進することを応援しています。
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