竪穴区画・異種用途区画の考え方|防火区画の応用を完全解説【一級建築士試験】

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メタディスクリプション: 一級建築士試験の頻出テーマ「竪穴区画・異種用途区画」を令112条の条文番号とともに徹底解説。4種の防火区画を比較表で整理し、試験で狙われる誤り選択肢のパターンも網羅。社会人受験生が短時間で得点力を上げる整理法も紹介します。


竪穴区画・異種用途区画の考え方|防火区画の応用を完全解説【一級建築士試験】


はじめに:面積区画の次は「竪穴」「異種用途」で差をつける

「面積区画はなんとか覚えた。でも竪穴区画と異種用途区画になった途端、急に自信がなくなる……」

そう感じている社会人受験生は少なくありません。面積区画は「1500㎡」「500㎡」という数値が目立つため比較的イメージしやすいのですが、竪穴区画・異種用途区画になると、「どんな建物が対象なのか」「どの防火設備を使えばいいのか」「令112条の何項を見ればいいのか」と、混乱のポイントが一気に増えます。

しかし、この2つの区画は理解の構造がシンプルです。「どんな空間・用途が対象か」「どんな区画方法が求められるか」「どんな場合に除外されるか」という3つの軸を整理すれば、試験本番でも自信を持って解答できます。

この記事では、竪穴区画(令112条9項)・異種用途区画(令112条18項)・高層区画(令112条7項)を中心に、令112条の防火区画全体を体系的に解説します。忙しい社会人受験生のために、試験で使える整理表とよくある誤り選択肢のパターンも紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。


防火区画4種の復習(面積・竪穴・異種用途・高層)

竪穴区画・異種用途区画を理解するには、まず防火区画4種の全体像を頭に入れておく必要があります。それぞれの「目的」「根拠条項」「キーワード」を比較表で確認しておきましょう。

区画の種類 根拠条項(令112条) 目的 主なキーワード
面積区画 第1項〜第4項 床面積が大きくなりすぎないよう区切る 1500㎡・500㎡・スプリンクラー緩和
高層区画 第7項・第8項 高層部分の延焼を防ぐ 高さ31m超・200㎡
竪穴区画 第9項 縦方向の連続空間(竪穴)からの煙・火の拡大を防ぐ 吹き抜け・階段・EV・準耐火建築物
異種用途区画 第18項 用途の異なる部分が混在する建物での延焼防止 複合用途・特定の用途の組み合わせ

この表のポイントは、各区画が「何を守るために設けられているか」という目的の違いを把握することです。面積区画は「水平方向の広がり」を制限し、竪穴区画は「垂直方向の広がり」を制限します。異種用途区画は「用途の境界」を明確に区切ることで、火災リスクの性質が異なる部分を分離します。

それぞれの目的を理解した上で、各区画の詳細を見ていきましょう。


竪穴区画とは(令112条9項)

竪穴区画の断面図 — 階段室・EVシャフトを特定防火設備で区画

竪穴区画の目的と「竪穴部分」の定義

竪穴区画は、建物内の竪穴部分(たてあなぶぶん)から火煙が上階へ拡大するのを防ぐための区画です。

「竪穴部分」とは、複数の階にわたって上下に連続した空間のことです。具体的には以下のような部分が該当します。

  • 階段・階段室
  • エレベーターの昇降路(シャフト)
  • エスカレーター周辺の吹き抜け
  • ダクトスペース・パイプシャフト
  • 吹き抜け(アトリウム等)
  • ダムウェーター(小型荷物用エレベーター)

これらの空間は、火災時に「煙突効果(煙突ドラフト)」によって急速に煙や炎が上層階に広がる危険があります。竪穴区画はその拡大経路を断つ役割を担っています。


対象建築物・対象部分

令112条第9項の竪穴区画が適用される建築物の条件は以下の通りです。

対象建築物(いずれかに該当する場合):

  1. 主要構造部を準耐火構造とした建築物で、地階または3階以上の部分に居室がある場合
  2. 令112条第9項各号に規定する特殊建築物の竪穴部分

1については、準耐火建築物のうち、「地階に居室がある」または「3階以上に居室がある」ものが対象となります。1階・2階だけに居室がある準耐火建築物(例:2階建て住宅等)は対象外です。

2については、自動車車庫・映画館・劇場・公衆浴場など、令112条第9項各号に列挙されている用途の特殊建築物で竪穴部分を有するものが対象です。

対象となる竪穴部分:

上記の建築物における、以下の部分が区画の対象となります。

  • 階段の部分(令26条に規定する直通階段も含む)
  • 昇降機の昇降路の部分
  • ダクトスペース・パイプシャフト等
  • これらに類する部分

区画の方法(防火設備の種類)

竪穴区画を設ける際に使用する防火設備は、令112条第9項の規定により「防火設備(法第2条第9号の2ロ)」が必要とされます。

ここで注意が必要なのは、面積区画(特定防火設備が必要)との違いです。

区画の種類 開口部に必要な防火設備 耐火時間
面積区画 特定防火設備(旧甲種防火戸) 1時間以上の遮炎性能
竪穴区画 防火設備(旧乙種防火戸)または特定防火設備 20分以上の遮炎性能
異種用途区画 特定防火設備 1時間以上の遮炎性能

竪穴区画における防火設備は、原則として常時閉鎖型または随時閉鎖型(煙感知器・熱感知器連動)のいずれかである必要があります。

また、壁・床については準耐火構造以上であることが求められます。


適用除外

竪穴区画が免除(適用除外)される主なケースは以下の通りです。

  1. 主要構造部を耐火構造とした建築物の竪穴部分(耐火建築物の竪穴)
    耐火建築物はより高い耐火性能を持つため、令112条第9項の竪穴区画の対象外とされる場合があります。ただし後述の高層区画の適用に注意が必要です。

  2. 3階以下で床面積の合計が200㎡以内の住宅の竪穴部分
    住宅の規模が小さい場合は適用が除外されます。

  3. 吹き抜け等の竪穴部分と周囲を区画する壁が存在しない場合
    構造上、竪穴部分を周囲と物理的に分離することができない場合。

  4. 令112条第9項ただし書きによる除外
    竪穴の用途や構造上の理由により、令が個別に除外を定めている場合があります。

試験ではこの「適用除外」の条件を逆手に取った引っかけ問題が頻出です。「〇〇の建築物は竪穴区画が不要である」という選択肢が出たとき、その理由が正当かどうかを条文ベースで判断できるようにしておくことが重要です。


異種用途区画とは(令112条18項)

異種用途区画の目的

異種用途区画は、火災リスクや使われ方が異なる複数の用途が1棟の建物に混在する場合に、その境界部分を防火的に区画するものです。

たとえば、低層階にスーパーマーケット(物販店舗)、上層階に共同住宅が入っているような複合用途建築物では、店舗で火災が発生した場合に居住部分へ延焼しないよう、用途の境界を明確に区切ることが求められます。


対象となる用途の組み合わせ

令112条第18項では、異種用途区画が必要となる用途の組み合わせが限定列挙されています。すべての異種用途の組み合わせに適用されるわけではない点に注意してください。

令112条第18項が適用される主な用途の組み合わせ(2025年施行の法令基準):

特定の用途(区画が必要な側) 組み合わせる他の用途
自動車車庫(令2条1項四号に規定するもの) 他の用途すべて
法別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途(劇場・映画館・演芸場・公会堂・集会場) 他の用途
法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途(病院・診療所・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎・児童福祉施設等) 他の用途

重要なポイント: 令112条第18項は適用される用途の組み合わせが限定されており、たとえば「事務所と店舗」や「事務所と共同住宅」のような組み合わせが常に対象になるわけではありません。受験年度の条文で必ず確認することが求められます。


区画の方法

異種用途区画に必要な防火設備は、特定防火設備(旧甲種防火戸)です。これは面積区画と同じレベルの防火設備であり、1時間以上の遮炎性能が求められます。

区画の構成要素:

  • 区画する壁・床:耐火構造(令112条第18項の規定による)
  • 開口部:特定防火設備(常時閉鎖型または随時閉鎖型)

なお、異種用途区画においては、スプリンクラー等による緩和規定は原則として適用されません。面積区画のようなスプリンクラー緩和がないため、この点も試験で引っかかりやすいポイントです。


令112条17項との違い

令112条には、第17項という規定もあります。この第17項は防火区画に関する技術的な規定(壁・床の構造、防火設備の要件等)を定めるものであり、「どんな場合に区画が必要か」を規定する第18項とは役割が異なります。

条項 内容
令112条第17項 防火区画の構造に関する技術的基準(壁・床・防火設備の仕様)
令112条第18項 異種用途区画の適用条件(対象用途・区画方法)

試験では「令112条第18項は異種用途区画の技術基準を定めている」という誤った選択肢が出ることがあります。第18項は「適用条件と区画方法」を規定しており、構造の技術基準は第17項が受け持っているという関係を押さえておきましょう。


高層区画(令112条7項)の概要

高層区画は、高さ31mを超える建築物の部分に対して、通常の面積区画よりも厳しい区画を義務づけるものです。

高層区画の基本要件

  • 対象:建築物の高さ31mを超える部分
  • 区画面積の上限:床面積の合計200㎡以内ごと(令112条第7項)
  • 防火設備の仕様:特定防火設備(1時間以上の遮炎性能)

高さ31mという数値は、消防車のはしご車が届く限界高さを意識したものと言われています。31mを超える高層部分は消防活動が困難になるため、火災時の延焼防止をより厳格に求めているのです。

スプリンクラーによる緩和

高層区画においても、スプリンクラー設備を設けた部分については床面積を1/2として計算することができます(実質400㎡まで1区画)。

条件 区画面積の上限
スプリンクラーなし 200㎡以内ごと
スプリンクラーあり(床面積を1/2換算) 400㎡相当まで1区画

高層区画と面積区画の関係

高層区画の200㎡という数値は、面積区画の1500㎡・500㎡よりも厳しい基準です。高さ31mを超える部分においては、面積区画に加えて高層区画も同時に適用されます(より厳しい方が優先)。

試験では「高層区画は面積区画の一種である」「面積区画の特例として200㎡が適用される」といった誤った選択肢が出ることがあります。高層区画は令112条第7項・第8項に独立して規定された別の区画であり、面積区画(第1項〜第4項)とは異なる規定です。


試験頻出の誤り選択肢パターン

一級建築士試験の法規問題では、防火区画の誤り選択肢に一定のパターンがあります。以下に代表的なものをまとめます。


パターン1:竪穴区画に「特定防火設備」が必要と誤認させる

誤った選択肢の例:

「主要構造部を準耐火構造とした建築物で3階以上に居室がある場合、竪穴部分を区画する開口部には特定防火設備を設けなければならない」

正しい知識:
竪穴区画に必要なのは原則として防火設備(旧乙種防火戸・20分以上の遮炎性能)です。特定防火設備(1時間以上)を要求するのは面積区画・異種用途区画です。ただし、令112条第9項の規定を正確に確認し、用途や構造条件によって異なる場合があることも押さえておきましょう。

攻略法: 「竪穴=防火設備、面積・異種用途=特定防火設備」という対応を覚える。


パターン2:異種用途区画の対象用途を広く解釈させる

誤った選択肢の例:

「事務所と店舗が同一建物内に存在する場合、その境界部分に異種用途区画を設けなければならない」

正しい知識:
異種用途区画はすべての異種用途の組み合わせに適用されるわけではありません。令112条第18項に列挙された特定の用途(自動車車庫、劇場・映画館等、病院・共同住宅等)が含まれる場合に限り適用されます。「事務所と店舗」だけでは通常対象になりません。

攻略法: 異種用途区画は「限定列挙」であることを意識し、必ず条文の用途リストを確認する。


パターン3:高層区画を「面積区画の一種」と混同させる

誤った選択肢の例:

「高さ31mを超える建築物の面積区画は、200㎡以内ごとに設けなければならない」

正しい知識:
高層区画(令112条第7項)は面積区画とは別の独立した規定です。「面積区画として200㎡」という表現は誤りであり、正確には「高層区画として200㎡以内ごと」です。

攻略法: 区画の名称と根拠条項を必ずセットで覚える。「200㎡=高層区画=令112条第7項」という対応を定着させる。


パターン4:異種用途区画にスプリンクラー緩和があると誤認させる

誤った選択肢の例:

「スプリンクラー設備を設けた場合、異種用途区画の区画面積を2倍に緩和することができる」

正しい知識:
スプリンクラー緩和(床面積を1/2として計算)は面積区画・高層区画に適用されるものです。異種用途区画には適用されません。異種用途区画の緩和規定はスプリンクラーとは連動していないことを覚えておきましょう。

攻略法: 「異種用途区画にスプリンクラー緩和はない」を独立した知識として記憶する。


パターン5:竪穴区画の「3階以上」要件を見落とさせる

誤った選択肢の例:

「主要構造部を準耐火構造とした2階建て専用住宅(1階・2階に居室あり)は竪穴区画が必要である」

正しい知識:
令112条第9項の竪穴区画は、「地階または3階以上の部分に居室がある」場合に適用されます。1階・2階のみに居室がある2階建て建築物は対象外です。

攻略法: 「竪穴区画の条件=地階か3階以上に居室」という要件を正確に記憶する。


社会人向け覚え方・整理法

社会人受験生が限られた時間で竪穴区画・異種用途区画を習得するための、実践的な学習法を紹介します。


覚え方1:「区画の目的」から逆引きで考える

防火区画の4種類を「目的」から逆引きすると、条文を見なくても内容を推測できるようになります。

  • 面積区画:水平方向に広がりすぎないよう「面積」で区切る
  • 竪穴区画:垂直方向に連続する「竪穴(縦の穴)」を区切る
  • 異種用途区画:「用途が異なる」部分の境界を区切る
  • 高層区画:「高い」建物の上層部で厳しく区切る

名前と目的が一致しているため、一度理解すれば忘れにくくなります。


覚え方2:防火設備の種類を「区画の厳しさ」と対応させる

どの区画にどの防火設備が必要かは、区画の「厳しさ」で覚えるとスッキリします。

厳しい区画(面積・異種用途)→ 特定防火設備(1時間以上)
比較的ゆるい区画(竪穴)→ 防火設備(20分以上)

「面積区画と異種用途区画はセットで特定防火設備」と覚えるだけで、誤り選択肢の多くを見抜けます。


覚え方3:令112条の項番号を「グループ」で整理する

令112条は条文が長く、どの項がどの区画に対応しているか混乱しがちです。おおまかなグループとして覚えておきましょう。

令112条の項番号(概略) 内容
第1項〜第4項 面積区画の規定
第7項・第8項 高層区画の規定
第9項 竪穴区画の規定
第17項・第18項 異種用途区画の規定(構造基準・適用条件)

法令集にインデックスを貼る際は、この対応をそのままラベルにすると、本番で迷わず条文を引けるようになります。


覚え方4:「スプリンクラー緩和の適用範囲」を明確に記憶する

スプリンクラーによる床面積1/2計算(緩和)の適用範囲は以下の通りです。

  • 面積区画:適用あり
  • 高層区画:適用あり
  • 竪穴区画:基本的に適用なし(区画方法の問題であり面積緩和とは別の論点)
  • 異種用途区画:適用なし

「面積・高層はスプリンクラー緩和あり、竪穴・異種用途はなし(または関係なし)」という軸で整理すると混乱を防げます。


社会人向けの学習フロー

限られた学習時間を効率的に使うための推奨フローを紹介します。

STEP 1(15分):4種の区画を比較表で整理する
この記事の比較表をノートに書き写し、「種類・条項・目的・対象・防火設備」の5列を自分の手で埋める。

STEP 2(20分):各区画の「対象建築物の条件」を確認する
特に竪穴区画の「地階または3階以上に居室」という要件は試験頻出なので、条文と照らし合わせて確認する。

STEP 3(30分):過去問で誤り選択肢のパターンを抽出する
正誤ではなく「なぜ誤りなのか」の理由を書き出す。本記事で紹介したパターンと照合することで、理解の定着を確認する。

STEP 4(10分):法令集にインデックスを整備する
令112条の各区画に対応するページにインデックスを貼り、本番で素早く参照できる状態にする。


まとめ

この記事では、竪穴区画・異種用途区画・高層区画を中心に、防火区画4種の全体像を解説しました。

4種の防火区画の対応まとめ:

区画の種類 令112条 対象の核心 必要な防火設備 SP緩和
面積区画 第1〜4項 耐火・準耐火建築物の水平区画 特定防火設備 あり
高層区画 第7・8項 高さ31m超・200㎡ 特定防火設備 あり
竪穴区画 第9項 準耐火建築物の竪穴部分 防火設備 なし
異種用途区画 第18項 限定列挙された用途の混在 特定防火設備 なし

試験で差がつくポイント3つ:

  1. 竪穴区画は「防火設備」(特定防火設備ではない)
  2. 異種用途区画は限定列挙(すべての異種用途の組み合わせに適用されるわけではない)
  3. 令112条の項番号と区画の種類を対応させて覚える

防火区画は、面積区画・竪穴区画・異種用途区画の3本柱をセットで理解することで、試験での得点力が大きく上がります。まず「4種の比較表」を自分でまとめる作業から始めてみてください。整理した知識は、過去問演習を通じて実践的な得点力へと変わっていきます。


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この記事は2026年3月時点の情報をもとに執筆しています。令112条は法改正により内容が変わることがあります。試験の最新情報および条文は、公益財団法人建築技術教育普及センターの公式サイトおよび最新の法令集でご確認ください。

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